『人間失格』再読
「恥の多い生涯を送ってきました」で始まる太宰治の自伝的小説。
父親をはじめとした周囲の望む通りの子供を演じて道化じみた行為をする自分への嫌悪と。
軽蔑し見下している人間と表面的に付き合う自分への軽蔑と。
無垢で純粋さ故に出入りの商人に犯されてしまう妻ヨシ子、「二匹の動物がいた」という表現に内包される自分をも含めた人間存在への絶望と。
そしてラストのマダムの言葉。
「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、、、、いえ飲んでも神さまみたいないい子でした」
このセリフに凝縮された周囲との断絶、絶望感と一縷の希望の表現に震えた十五の夜。(尾崎豊の歌が聞こえたきたわ~♪)
自分という人間存在の暗部を描いた太宰治の遺作でもある。
今はネットで無料で読める。
十代の頃に読んで衝撃と共に一種の救いにもなった忘れがたい小説だ。
海外では幼児性虐待者の小説として読まれているとのこと。
年を重ねてから読んでも深い部分にある人間という存在への絶望感は昔と全く変わらない。無垢で純粋では生きられないこの世界への絶望と、それでも今日まで生きてきたワタシという存在への諦(あきら)めという名の希望と。
ラストのマダムの言葉に対する感覚の変化に自身の人生を感じた『15+43の夜』~♪